あの時:レアル・マドリードのアウェイ観戦ではまった、暗闇の迂回路(徒歩)

新型コロナウィルス感染拡大による規制の為、12月も引き続き、こちらではスタジアムで
のサッカー観戦は全てなしとなった。

去年の今頃は、ベルギーのブリュージュに、
UEFAチャンピオンズリーグのグループステージの1戦、
クラブ・ブルージュ(Club Brugge)対レアル・マドリード(Real Madrid)を
観戦に行けたことが今となっては懐かしい。

この試合は21時開始だったが、余裕をもって18時半にはブリュージュの街の
中心部から公共バスで会場に向かった。

最初は比較的空いていたバスの中に、ブルージュのマフラーを巻いたサポーターが段々と
増えていった。
その中で、マドリードのマフラーをしているのは夫と私だけ、
バスの中で既に完全アウェイだったが、ブルージュサポーターは温かく私達を見守って
いてくれた(気がした。)

そして、この街の観光ガイドをしているという男性が私達に話しかけてくれたことを
きっかけに、ブルージュの街やサッカーのことなど、
楽しく話しながらバスの中の時間を過ごしていた。
彼も私たちと同じく、バスでこの試合観戦に向かっていた。

街の中心部から30分程で、ブルージュのスタジアム、
ヤン・ブレイデルスタディオン(Jan Breydel Stadion)に到着予定だった。

あと二つバス停を過ぎれば到着、というところで、バス停でもないのにバスが停車した。

そして、警官がバスに乗ってきて「レアル・マドリードのサポーターはいますか?」ときいた。

どうみても、マドリードのマフラーを巻いている私達二人に控えめな視線が
集まっているが、誰も「ここにいます!」と言うこともなかった。

何となく不安がよぎったものの自己申告すると、
「じゃあ、その二人ちょっと前に来てください。」と言われた。

バスの前方に行くと警官が、
「レアル・マドリードサポーター専用の迂回路の標識があるので、
それに従ってここからは試合会場まで歩いていってください。」
と言った。

バスだと、あと二つバス停を過ぎれば到着なのだが、歩くとなるとここからは
まだかなり距離があるので、出来ればこのままバスに乗っていたい・・。

理由を尋ねると、ブルージュのウルトラスの人たちとのトラブルを避けるため、
とのことだった。

仕方がないのでバスを降りると、目の前にレアル・マドリードのエンブレム 
の入った迂回路の標識があった。

何と私達専用の迂回路が用意されている!と一気にテンションが上がり、その標識と
記念撮影までしてその迂回路を歩き始めたものの、その興奮もつかの間、
矢印の方向へ進んでいくと、街灯がほとんどない住宅街に入っていった。

警官は全くいない。

real madrid detour

ここでブルージュのウルトラスから攻撃されたら、この道って一体・・・
と思いながら、更に右折、左折、と迂回路を進んでいく。

不安になり、スマホで地図を見るとスタジアムからどんどん遠ざかっていた。

それでも進まなければどこにもたどり着かないので、歩き続けた。

途中からは、ブルージュのサポーター達、それも大勢とどんどんすれ違っていく。

歩くこと1時間、ようやくスタジアムの近くまで来たものの、ここからは5回に渡り
離れてチェックポイントが待っていた。

① 観戦チケット引き取り時に手首につけられたリストバンドの確認
② 手荷物チェック
③ 再度リストバンドの確認
④ 身分証明書と観戦チケットの提示
⑤ そして最後は、警官と警察犬の前を一人ずつ通過
 (発煙筒、或いは薬物チェック??)

そしてようやくスタジアムに入れた頃には既に、あと20分で試合開始という
時間になっていた。

とりえずトイレに行ってから席に着こうと、トイレの前に行くとあ然とした。

トイレの扉


女性用と男性用はもちろん分かれているが、かなり年季の入ったトイレの入り口の
扉の上には、様々なクラブのサポーターが貼ったと思われる、
たくさんのステッカー。

更に、入り口の右上、「女性」マークの上にもステッカーが貼られたままで
よく見えないため、実際に入っていこうとする男性もいた。

ちなみに、UEFAチャンピオンズリーグでは、スタジアム内では
アルコール類の販売はないのだが、その分、スタジアムに入場前に
たっぷりと飲んできている人も多い。

トイレや建物全体の「ラフさ」に若干の気がかりを覚えつつ席に向かうと、
それぞれの席についているはずの番号が、11、26、27、のように番号が飛んでいたり、
番号自体ついていなくて、カオスだった。

どうにか、私たちのチケットに記載されている席番号の辺りで落ち着く。

椅子は折り畳み式でなくそのままなので、
多くの人がその椅子の上を歩いて移動しており、靴の跡で汚くなっている。

最初は自分の席を拭いていたものの、きりがないのでその後は
きれいにすることは諦めた。

アウェイゲームの場合、マドリードサポーターの席では
大抵の場合座って観戦ができるのだが、今回はアウェイサポーター用の席から
試合が見にくい上、手前のゴールの視界が、柵で遮られている。

そのため、前の席の観客が全員立って観戦していたので、
私たちも立っていないと試合が見えなかった。

レアル・マドリードは既にグループステージ突破を決めていたので、
この試合の結果は直接的に大きな影響はなかった。

それでも、試合をするからにはもちろん勝ってほしい。


スタジアム内

前半を無得点で折り返した後、レアル・マドリードのブラジル出身、当時18歳の
ロドリゴ(Rodrygo)選手が先制点を挙げて、1対0となった。

その後1対1に追い付かれたものの、ヴィニシウス(Vinícius Jr.)選手のゴール、
そして終了間際のモドリッチ (Modrić) 選手のゴールで、3対1で勝利した。

試合後も、アウェイサポーターの移動があちこちで制限されており、
バス停に向かうことが出来なかったが、ブルージュのサポーターとは
すれ違い放題だった。

結局1時間以上歩き、ホテルに着いたのは午前0時を過ぎていた。

それでも、勝利の後は足取りが軽く、スタジアムから歩き始めて10分もすると、
まわりにはもう誰もいなくなり、
冷たい空気と夜の静寂の中、自分自身の興奮した気持ちもクールダウンしながらの、
気持ちのいい散歩となった。

レアル・マドリードは、2019/20のシーズンはこの後、
決勝トーナメントの ラウンド16でマンチェスター・シティに敗れ、
チャンピオンズリーグを後にした。



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