朝から快晴でとても暑かった日曜日の午後、夫はドイツアマチュアサッカーの
地方カップ戦を見に行ってきました。
帰宅後、「どうだった?」と聞くと
「それがさあ、」と苦笑いしながら
「ハチに刺された。こことここ、それから右ひざのここと、背中も。」と、
刺された場所を指し示しながら言いました。
見ると、右手親指の付け根と左手の甲、右ひざの上、そして背中の左上と、
4か所もハチに刺されていたのです。
私はそれを聞いて、サーッと血の気が引いていきそうでした。
私自身、生まれて初めてハチに刺されたのがドイツに来てからで、
パンパンに腫れて恐ろしくなり、病院に行った経験があるからです。
「えーっ。すぐ洗った?ハチの針刺さった?抜いた?」と聞くと
「うん、すぐトイレに行って洗った。こっちの手は針が刺さってたから抜いたよ。」
と答えが返ってきたのと、刺されてから1時間以上経過していること、
目まいや具合の悪さもないとのことだったので、それらを合わせて考えると、
とりあえず少しほっとしました。
詳しく聞くと、そのサッカー場ではハチがたくさん飛んでいて、夫だけでなく
周りの観戦者も同様に、ブンブン近寄ってくるハチにかなり手こずっていたそうです。
夫は、立って試合を見ていたところ、急にチクっとやられたそうです。
左手にいたっては、スマホを取り出そうと左手をポケットの中に
入れようとした時、そのポケットにほぼ入りこんでいたハチに刺されたそうです。
「もうハチがすごくてさ、試合見てて、初めて途中で帰りたいと思った!」と
言うので、
「え~。じゃあ、途中で切り上げれば良かったのに。」と言うと、
「それが、電車の時間まですっごい時間があったから、とりあえず最後まで見た。」
とのことでした。
私なら、1時間待たなくてはいけなくても、試合観戦を途中で切り上げ
駅に行って電車を待つことを選ぶと思います・・・。
翌日から私たちは小旅行を予定していましたが、ハチに刺された箇所は
特に腫れておらず大丈夫だったので、予定通り電車で旅行に出発しました。
でも安心するのはまだ早かったようです。
中世の面影が残るきれいな街に立ち寄ってから、夕方、宿泊するペンションのある村に
到着しました。
チェックインし、荷物を部屋に置いてから夕飯を食べにペンションから徒歩10分くらいの
ところにあるレストランに行きました。
レストランの外の席に座り食事をしていて、私が夫の右手を何気なくふっと見た時のことです。
なんと、右手親指の付け根から腕の内側がぷっくりと腫れあがり、
肘を越えたところまで赤くなっています。
私はそれを見た途端、食欲はどこかにいき、クラクラしそうになりました。
ちょっとこれはさすがにまずいんじゃないかな・・。
もしかして、病院に行かなきゃかな・・。
でもこの村に病院はなさそうだし、近くに薬局もないし・・。
と思うと同時に、
でもハチに刺されてから丸1日経っているから、大丈夫であってほしい・・。
でもでも、遅れて具合が悪くなることもある、ということを以前ネット上で
読んだこともあり、ぐるぐると私の頭の中で心配が渦をまき、食事どころではなくなっていました。
私達が宿泊するペンションは年配のご夫婦が経営されていたのですが、養蜂していることを
思い出し、ミツバチでもスズメバチでもハチはハチなので、まずはペンションに帰り、
とにかくそのご夫婦に聞いてみることにしました。
食事もそこそこに、焦る気持ちを抱えペンションに戻ると、奥様がペンションの前に
咲いている花に水やりをしているところでした。
夫の腫れ上がった右腕を見せて、前日ハチに刺されたことを伝え、
「これ、大丈夫でしょうかね?」と恐る恐る聞いてみると、
「あぁ~。これ、あぁ~、これね、大丈夫ですよ!」とのことだったので、
とりあえずその言葉にふ~っと一安心しました。
そして奥様は私たちに
「玉ねぎがいいんですけどね、玉ねぎ。持ってますか?」と聞くので、
私達は「え、玉ねぎですか!いや~、玉ねぎは持ってないんです。」と答えました。
すると、「家にあるから、じゃあ、今それ渡しますね。」といいながら、
ペンションの中に入って行きました。
私達も彼女に続いて中に入ると、紫色の玉ねぎを一つ差し出してくれました。
「玉ねぎと、あと、刺されたところを冷やすのと、その右腕を上げるといいですよ」
とのことだったので、その3つを実践することにしました。
部屋に戻り、その玉ねぎを切って赤く腫れている腕に押し当てたり、
しばらく腕に乗せておいたりしました。
ハチに刺された他の3か所を再確認してみると、
右ひざと左手はほんの少し赤くなっているくらいだったのですが、
背中の左上は赤く、四角くポコッと大きく腫れていて、それを見た瞬間、
再び私の背筋に寒いものが走りましたが、とりあえずそこも玉ねぎで処置し、
冷やしました。
(後で知人に聞くところによると、ドイツではハチに刺されたら玉ねぎ、というのは
「おばあちゃんの知恵」的なものであるそうです。)
翌朝、右腕と背中の腫れは、少しですがひいたようで、少なくとも
ひどくはなっていませんでした。
本人は痛みもなく、元気でハイキングに行く気満々だったので、予定通り昼間は
その村でハイキングをしました。
それでも、まだ腫れと赤みがあったのと、旅行はまだ続く中、旅行中の玉ねぎ携帯は
ちょっと難しかったので、夕方、隣町の薬局で塗り薬を買いました。
翌日以降、赤く腫れ上がっていた2か所の腫れがスーッと引いていくとともに、
私の心配もようやく落ち着いていきました。